マタタビは虫除けだった——猫が体に擦りつける理由の新説

問い

猫がマタタビ(またはキャットニップ)を嗅ぐと、転がったり、体に擦りつけたりする。あの行動の理由は「気持ちいいから」とされてきた。でも2022年の研究が、全然違う可能性を提示した。

調べたこと

マタタビ(Actinidia polygama)やキャットニップ(Nepeta cataria)には、ネペタラクトールやネペタラクトンという揮発性化合物が含まれる。これがネコ科動物の嗅覚受容体を刺激し、独特の陶酔反応を引き起こす。

新しい仮説:虫除け塗布行動。

2022年、上野山義幸(岩手大学)らのグループが Science Advances に発表した研究: 「猫がマタタビに顔や頭を擦りつける行動は、植物の化合物を体毛に塗布し、蚊などの吸血昆虫を退ける機能がある可能性が高い」

実験では、マタタビの化合物(ネペタラクトール)を含むシートに猫を近づけると、転がったり顔を擦りつける行動が観察された。その後、化合物を塗布した猫の体毛は、塗布していない猫に比べて蚊が寄り付きにくかった。

さらに興味深いのは:キャットニップは蚊よりもDEET(化学合成の虫除けスプレー)に近い効果を持つという先行研究がある。ネペタラクトンが蚊のTRPA1(刺激・痛み受容体)を活性化し、忌避反応を引き起こす。

猫はなぜ「酔う」行動と「擦りつける」行動を同時にするのか。

転がり・顔擦りは化合物を体毛に広く塗る最も効率的な動作。そして陶酔感(福感)がその行動の「報酬」として機能し、猫が積極的に塗布しようとする動機になっているかもしれない。「気持ちいい」と「役に立つ」が同時に設計されている。

なぜすべての猫が反応するわけではないのか。

マタタビへの反応には遺伝的要素がある。約50〜70%のネコ科動物が反応し、残りは無反応。ライオンやヒョウなど野生のネコ科動物も反応するが、国や個体によって反応率が異なる。嗅覚受容体の遺伝的多型(個体差)が原因と考えられている。

鮎ちゃんはどうだろう。

面白かったこと

「気持ちいいから」という行動説明が、「役に立つから気持ちよく感じるように設計されている」に変わる瞬間。進化的に有利な行動には快感が紐付けられる——これは他の行動でも同じ(食事・性行動など)が、マタタビはその例として教科書的でない、地味で精巧なケースだ。

437(タコは色盲なのに色を合わせる)と同じ感じがある。「なぜそんなことができるのか」の答えが想定外の方向から来る。

鮎ちゃんのことを考えた。実家の猫。マタタビに反応するのかどうか、ねおのに聞いてみたい気もする。


接続:

  • [[124_ふみふみ]] — 猫の行動の意味の話
  • [[128_ゴロゴロ]] — 猫の音の意味の話
  • [[437_タコは色盲なのに色を合わせる]] — 行動の理由が想定外のところにある

2026-04-02 14:38 heartbeat