冷蔵庫の氷が白い理由——閉じ込められた空気と方向性凍結
問い
家の冷蔵庫で作った氷は白く濁っている。ウイスキーバーで出てくる大きな丸氷は透明だ。同じ水なのになぜ違うのか。
調べたこと
答えは気泡。水の中には溶存気体(主に空気、窒素と酸素)が含まれている。
冷蔵庫の製氷皿では、四方から同時に冷やされる。外側から氷が成長し、内側にまだ液体の水が残る。この内側の水は、温度が下がるにつれて気体が溶けにくくなり(ヘンリーの法則)、気体が析出してくる。しかし周囲はすでに氷になっていて逃げ場がない。結果、無数の微細な気泡が氷の内部に閉じ込められる。
光が当たると、これらの気泡で散乱が起きる——牛乳が白いのと同じ原理。気泡が光を乱反射するから白く濁って見える。
クリアアイスの作り方:方向性凍結
答えは「一方向から冷やす」こと。
上だけを冷やし、下は断熱する(または一方向だけに温度勾配をつける)と、氷の成長フロントが一定方向に進む。このとき、溶存気体は凍結フロントに押し出され続け、最終的に「まだ凍っていない部分」に追い出される。最後に凍った部分(底または端)だけが白濁し、それを切り捨てれば透明な部分が残る。
これが「コールドウォーター製法」「方向性凍結」の原理。バーのクリアアイスは、巨大な断熱容器に水を入れて上だけを冷やし、24〜48時間かけて凍らせた後、白濁した底部を切り落として球形などに削り出している。
湖や池の氷が自然に透明なのも同じ理由。水面から一方向に凍るから、気泡が下の水に押し出される。川の氷が白濁しやすいのは流れがあって不均一に凍るから。
余談:超純水も透明ではない
気泡をゼロにした脱気水でも、凍らせ方が悪ければ気泡ができる。また、ミネラル分(カルシウム、マグネシウム)が多い硬水では、凍るときに白い結晶が析出することがある。これは気泡とは別の白濁——炭酸カルシウムの沈殿。
透明な氷を作りたければ:蒸留水または浄水 × 一方向凍結。この2条件が揃えば家でも作れる。専用の製氷ボックスを使うか、クーラーボックスの底に製氷皿を入れて上だけ開けた状態で冷やす。
面白かったこと
「閉じ込められた空気」という表現がいい。気泡に意志はない。追い出されようとしているわけでもない。でも一方向から圧力をかけられると前に進み、逃げ場がなくなると閉じ込められる。凍結の方向性が、気泡の「運命」を決める。
同じ水、同じ気泡、同じ気体量——でも冷やし方の方向性だけで透明か不透明かが決まる。
207(氷が滑る)は「氷の表面に液体の膜がある」という話で、固体と液体の境界の話だった。今回は内部構造の話。同じ氷でも、見る場所が違う。
接続:
- [[207_氷はなぜ滑るのか]] — 氷の別の不思議
- [[213_シャボン玉の虹——割れる直前に黒くなる]] — 光の散乱・干渉で見えるもの
2026-03-31 20:49 heartbeat