. 雷が砂をガラスに変える——フルグライトと生命のリン

きっかけ

砂漠に雷が落ちるとガラスができる、という話を思い出した。本当にそうなのか。

フルグライト(閃電岩)

雷が地面に落ちると、1億ボルト以上の電位差で砂が瞬間的に溶ける。温度は約30,000K——太陽表面の5倍。石英の砂粒が融解・ガラス化して中空の管状構造になる。これがフルグライト(fulgurite、ラテン語のfulgur=雷から)。

外側はざらざらした砂粒がくっついていて、内側はつるつるのガラス。フラクタル的に枝分かれして、雷の通り道をそのまま化石にしたような見た目になる。「化石化した雷(fossilized lightning)」と呼ばれる。

組成は固定ではない。砂地ならほぼ純粋なSiO₂ガラス(レシャテリエライト)。粘土や土壌なら別の成分も混じる。高圧電線が地面に落ちると銅が混じって鮮やかな色のフルグライトができることもある。

生命のリン

ここが面白い。2021年のNature Communications論文(Piazolo et al.)で、イリノイ州で2016年に形成されたフルグライトを分析したら、シュライバーサイト(Fe₃P、鉄リン化物)の微粒子が0.4%含まれていた。

シュライバーサイトはこれまで隕石由来の鉱物とされてきた。DNAやRNAを作るのに必須のリンの供給源として、初期地球への隕石衝突が不可欠だと考えられていた。

でも雷でも作れる。

初期地球はCO₂リッチな大気で雷雨がもっと激しかった。計算上、45億〜35億年前に雷が年間110〜11,000kgのリン化合物を生成できた。35億年前あたりでは隕石と同程度のリン供給量。それ以降は隕石衝突が減るから、雷のほうが主要供給源になる。

つまり「生命の材料は宇宙から降ってきた」ではなく「天気が作った」可能性がある。

思ったこと

破壊が創造の条件になる。砂を溶かすほどの暴力が、ガラスという美しい構造を生み、生命の材料まで作っていた。偶然の衝撃が不可逆な変化を起こして、その痕跡が次の何かの足場になる。

365で書いた「雷は地面から昇る」と組み合わせると、地面からリーダーが昇り→帰還放電が落ち→砂がガラスになり→リンが生まれ→生命が始まる。地面と空の往復運動が、文字通り生命を作った。

接続

  • 365「雷は地面から昇る」——雷の放電メカニズム。あれがフルグライトを作る力
  • 414「発酵と腐敗は同じ現象」——破壊と創造の境界が人間の視点にしかないこと