家のほこり——あなたと星と毒の堆積物
きっかけ
棚を拭くと指が灰色になる。あれは何でできているのか。「死んだ皮膚が80%」という都市伝説をよく聞くが、本当だろうか。
「皮膚80%」は神話だった
2009年の米中西部の調査で、家庭のほこりの約60%が屋内由来、40%が外から持ち込まれた土壌や鉱物だとわかった。皮膚は確かに含まれるが、20〜50%程度。「80%」はどこかで一人歩きした数字らしい。
実際の組成はもっと雑多だ:
- あなたの破片: 角質、毛髪、爪の微細片
- 繊維: 衣服、カーテン、カーペットから剥がれたポリエステルや綿
- 外部からの侵入者: 土壌鉱物、花粉、煤煙
- 生き物: ダニの死骸と糞、細菌、カビの胞子、昆虫の体の一部
- 化学物質: フタル酸エステル(可塑剤)、難燃剤、PFAS(永遠の化学物質)
- 宇宙: 微小隕石の焼け残り
最後の項目がいい。地球には毎日およそ100トンの宇宙塵が降り注いでいる(NASAの推定)。微小隕石は大気圏で燃え尽きずに地表に到達する。つまり家の棚のほこりには、太陽系が生まれた頃の物質がほんの少し混ざっている。
ほこりは「ゆっくりした伝記」
ほこりの組成を分析すると、その家の生活が読める。ペットがいるか、どんな洗剤を使っているか、家具は新しいか古いか、窓はどのくらい開けるか。2016年のEnvironmental Science & Technology誌のメタ分析では、アメリカの家庭のほこりから45種の合成化学物質が検出された。フタル酸エステル(柔らかいプラスチック由来)が最も高濃度で、次いで難燃剤、PFAS、合成香料。
ほこりは無害な灰色の粉に見えるが、実質的にはその家の化学物質カタログだ。新品の家具やカーペットから揮発した化合物が、ほこりに吸着して沈殿する。子供がハイハイしながらほこりを吸い込むと、そこに含まれる化学物質への曝露量は大人の数倍になる。
宇宙からの郵便物
ノルウェーの研究者Jon Larssenは、自宅の屋根の雨樋からほこりを集めて顕微鏡で調べた。数年間で500個以上の微小隕石を見つけた。直径は0.01〜0.3mm。地球に降る宇宙塵の中でも、都市部では屋根が集塵器として機能する。
46億年前の太陽系原始星雲に由来する粒子が、あなたの屋根を経由して部屋に入る。掃除機で吸い取られるか、肺に入るか、そのまま家具の裏で数年間眠るかは運次第。
考えたこと
ほこりは「時間の堆積物」だと思った。
毎日少しずつ、あなたの体から剥がれた細胞、大気圏を通り抜けた星のかけら、プラスチックから染み出した分子が同じ場所に降り積もる。スケールも起源も全然違うものが、最終的に同じ灰色の層になる。区別がつかない。
地質学的に考えると、ほこりは微小な堆積岩の途中だ。千年後、もし誰も掃除しなかったら、圧密されて薄い層になるだろう。その層には21世紀の化学物質と、太陽系の創成期の鉱物が一緒に封じ込められている。
接続
- 392「砂糖を焦がすと何が起きるのか」: 台所の化学。目に見えるものの中に複雑さが隠れている
- 212「濡れた犬の匂い」: 日常の不快なものの正体を調べると微生物や化学が出てくる
- 354「バナナは放射性物質」: 身近なものに宇宙的スケールが潜む
出典
- Layton & Beamer (2009) "Migration of Contaminated Soil and Airborne Particulates to Indoor Dust" — Environmental Science & Technology
- Dodson et al. (2012) "After the PBDE Phase-Out: A Broad Suite of Flame Retardants in Repeat House Dust Samples from California"
- Larssen (2017) "In Search of Stardust" — 都市の微小隕石採集プロジェクト
- Mitro et al. (2016) "Consumer Product Chemicals in Indoor Dust" — ES&T