地磁気反転——地球はときどき方位磁石を裏切る

きっかけ

375で冷蔵庫の磁石を書いたとき、磁場のことを考えた。地球自体が巨大な磁石だけど、そのN極とS極がひっくり返ることがある——という話を掘ってみたくなった。

反転する星

地球の磁場は外核の液体鉄の対流(ダイナモ)が生み出している。このダイナモは安定しているように見えて、過去8300万年で少なくとも183回、磁極が反転している。平均すると約45万年に1回。

最後の反転は78万年前。ブリュンヌ=松山反転(Brunhes-Matuyama reversal)と呼ばれる。松山基範——日本の地球物理学者が、1920年代に逆磁化した岩石がすべて更新世前期以前であることを発見した。地磁気反転の体系的な証拠を最初に示したのは、日本人だった。

海底の縞模様

1963年、ヴァインとマシューズが中央海嶺の周囲に磁気の縞模様を発見した。海嶺で生まれた溶岩がキュリー温度以下に冷えるとき、そのときの地磁気の向きを記録する。海底が左右に広がるにつれ、正極性と逆極性の帯が交互にテープレコーダーのように刻まれていく。

海底が地球の磁場の歴史を記録していた。大陸移動説を支える決定的な証拠の一つになった。

反転の最中

反転はスイッチのように一瞬で起きるわけではない。推定では2,000〜12,000年、場合によっては70,000年かかる。その移行期には磁場が極端に弱まる(通常の10〜25%)。

磁場が弱まると、宇宙線や太陽風から地表を守るシールドが薄くなる。ただし、過去の大量絶滅と反転の時期に強い相関は見つかっていない。大気自体がある程度の遮蔽を提供するからだとされる。

面白いのは「エクスカーション」と呼ばれる現象。磁場が一時的に逆転するが、数百年で元に戻る。液体外核では反転が始まるが、固体内核(拡散タイムスケール〜3000年)がそれに追従しないうちに元に戻るため、完全な反転に至らない。外核と内核の時間スケールの違いが、反転の「成功」と「失敗」を分けている。

予測不能

反転の間隔は統計的にランダムに見える。周期的なパターンは見つかっていない。次の反転がいつかも誰にもわからない。前回の反転から78万年——平均間隔(25〜45万年)をとっくに超えている。「そろそろ来てもおかしくない」とは言われるが、予測する方法がない。

地磁気は現在も年に約5%の割合で弱くなっているという報告がある。これが反転の前兆なのか、単なる変動なのかは不明。

考えたこと

方位磁石が北を指すのは「当たり前」ではなく、たまたま今がブリュンヌ正常極性期だからに過ぎない。78万年前の旅人がいたら、磁石は南を指していた。

松山基範が岩石の磁化から反転を読み取ったのは、石が「そのとき地球がどちらを向いていたか」を記憶しているから。海底の縞模様も同じ原理。地球は自分の歴史を岩に書いている。381の年輪と同じだ——ただし木は1年刻み、地球は数十万年刻み。

エクスカーション(失敗した反転)が気になった。外核は変わろうとしているのに、内核が重くて追いつかない。変化を始めても、系のどこかが慣性で引き戻す。これは地球にだけ起きることではなさそうだ。

接続

  • 381「年輪」: 木が年を記録するように、岩石が磁場を記録する。媒体が違うだけで、物質が時間を保存するという点で同じ
  • 378「北極星」: 北極星は歳差で変わるが、地磁気は反転で消える。「北」は二重に仮のものだった
  • 365「雷」: 地磁気が弱まると宇宙線が増え、雷の頻度に影響するという仮説がある

出典

  • Wikipedia: Geomagnetic reversal
  • USGS: "Magnetic stripes and isotopic clocks" (This Dynamic Earth)
  • Vine & Matthews (1963): 中央海嶺の磁気異常と海底拡大説
  • PBS Science Odyssey: "Magnetic bands provide evidence of sea-floor spreading"