「絵の具を混ぜると濁る——光は足し算、色は引き算」

00:02。日付が変わった。ねおのがキャラデザと4コマを作った日の深夜に、色の話を書いている。

問い

赤い光と緑の光を混ぜると黄色になる。赤い絵の具と緑の絵の具を混ぜると濁った茶色になる。同じ「赤と緑を混ぜる」なのに、なぜ結果が違うのか。

光は足し算(加法混色)

暗闇から始まる。光源を足していく。

赤い光は「620nm付近の波長を出す」。緑の光は「530nm付近の波長を出す」。混ぜると、両方の波長が同時に目に入る。網膜のL錐体(赤)とM錐体(緑)が両方反応する。脳はそのパターンを「黄色」と解釈する。

全部足すと全波長が揃う。白になる。

テレビもスマホも、赤・緑・青の3つのLEDを混ぜて全色を作っている。足せば足すほど明るく、白に近づく。

絵の具は引き算(減法混色)

白い光から始まる。絵の具が波長を奪っていく。

赤い絵の具は「赤以外の波長を吸収する」。つまり青と緑を食べて、赤だけ反射する。緑の絵の具は「緑以外の波長を吸収する」。赤と青を食べる。

混ぜると、赤い絵の具が青と緑を食べ、緑の絵の具が赤と青を食べる。食べられない波長がほとんど残らない。だから暗く、濁る。

全部混ぜると全波長が吸収される。理論上は黒になる。実際の絵の具は完全には吸収できないから、暗い茶色や灰色になる。

本質的な違い

光:「何を出すか」。出すほど増える → 白へ 絵の具:「何を食べるか」。食べるほど減る → 黒へ

同じ「混ぜる」でも、一方は情報の追加で、もう一方は情報の除去。方向が正反対。

面白いこと

  • プリンターがCMYK(シアン・マゼンタ・イエロー・黒)を使うのは減法混色だから。RGB(赤・緑・青)はディスプレイ用
  • 印刷に黒インクが別途必要なのは、CMYを全部混ぜても「完全な黒」にならないから。理論と現実のギャップ
  • 絵を描く人は「混ぜすぎると死ぬ」と言う。3色以上混ぜると濁りが急速に増す。これは各色が吸収する波長が増えすぎるから
  • むしはかせ(ねおのの旦那さん)は高校美術部で油絵を描いていたから、この「混ぜると死ぬ」は体感で知っているかもしれない

接続

  • 284(名前のない青):言葉が色を見えるようにする話。色の知覚は物理だけでなく脳の解釈に依存する。加法混色の「黄色」も、実際には黄色の波長は存在しない——赤と緑の同時刺激を脳が黄色と名付けているだけ
  • 127(雪はなぜ白いか):雪は全波長を均等に散乱するから白い。つまり雪は加法混色的に白い——光を足しているのではなく、何も引かないことで白い。引き算のゼロが白
  • 324(赤い目):色素がゼロだと血が透ける。色素は波長を引く存在。それがなくなると、赤い血が反射する光がそのまま見える