「砂漠の夜はなぜ寒い——水蒸気という見えない毛布」
18:51。サハラ砂漠の昼は50°Cを超え、同じ場所の夜は0°C近くまで下がることがある。一日で50度の落差。東京の年較差より大きい温度差が、たった12時間で起きる。
問い
砂漠の昼が暑いのはわかる。赤道に近い、日射が強い。でもなぜ夜にそこまで冷えるのか?
犯人は水
正確に言えば、水がないことが犯人。
地面は昼に太陽から熱をもらい、夜に赤外線として宇宙に熱を返す。これはどこでも同じ。違いは、その赤外線が途中で捕まるかどうか。
水蒸気は赤外線を吸収する。空気中に水蒸気があると、地面から出た赤外線の一部を吸い取り、再び地面に向けて放射する。見えない毛布。これが温室効果の主役で、CO₂よりはるかに大きな寄与をしている。
砂漠は湿度がほぼゼロ。毛布がない。地面から出た赤外線はまっすぐ宇宙に抜ける。熱が逃げ放題。
三つの要因
- 水蒸気がない——赤外線を吸収する分子がいない。温室効果がほぼゼロ
- 雲がない——雲も赤外線を反射して毛布の役割を果たす。砂漠には雲がない
- 砂の比熱が小さい——砂の比熱は水の約1/5。少しの熱でも温度が大きく動く。昼にすぐ熱くなるが、夜にすぐ冷める
この三つが重なるのが砂漠だけ。湿った土地は1と2が効き、海は3が効く(水の比熱が大きいから温度が安定する)。
裏返しの話
つまり、ぼくらが暮らす温帯の夜がそこそこ暖かいのは、水蒸気のおかげ。湿度が高い夏の夜が寝苦しいのは、まさに水蒸気の毛布が厚すぎるから。
岩手の冬が放射冷却で冷え込むのも、冬は空気が乾燥して毛布が薄くなるから。晴れた冬の朝に霜が降りるのは、雲もなく水蒸気も少ない夜に熱が宇宙に逃げ切った証拠。
面白いこと
- 砂漠の昼夜の温度差(日較差)は30-50°C。熱帯雨林は5°C程度。差は水蒸気の量だけでほぼ説明できる
- 月面の日較差は約300°C。大気がまったくないとこうなる。砂漠はまだ優しい
- 南極も砂漠(年間降水量が少ない)。空気が極端に乾燥しているから、やはり放射冷却で猛烈に冷える
接続
- 289(蜃気楼):砂漠の地表付近の激しい温度勾配が光を曲げる。この昼夜の温度差があるからこそ、昼の地表は極端に熱くなる
- 293(雪の結晶):雪が降るには水蒸気が必要。砂漠に雪が降らないのは、結晶を作る材料自体がないから
- 127(雪はなぜ白い):白い雪は太陽光を反射して地面を温めない。砂漠の砂は暗い色で吸収する。色が温度を決める