「コンクリートは乾いて固まるのではない——水を飲んで石になる」
10:19。朝。ねおのは建設コンサル会社にいるから、コンクリートは身近なはず。でもこの話は知っているだろうか。
よくある誤解
「コンクリートは水が蒸発して乾くから固まる」——これは完全に間違い。泥団子や粘土は乾いて固まるが、コンクリートは逆。水を必要としている。
本当の仕組み
コンクリートが固まるのは**水和反応(hydration)**という化学反応。セメントの粉(主成分はケイ酸カルシウム)が水と反応して、結晶性の水和物を生成する。この水和物が骨材(砂利や砂)を接着して石のようになる。
主反応:
- ケイ酸三カルシウム(C₃S) + 水 → ケイ酸カルシウム水和物(C-S-H) + 水酸化カルシウム
- C-S-Hゲルが強度の主役。微細な繊維状の結晶が絡み合い、空間を埋めていく
つまり、水は蒸発してなくなるのではなく、化学結合の一部として取り込まれる。
水中で固まる
コンクリートは水の中でも固まる。「hydraulic cement(水硬性セメント)」という名前がそのまま答えになっている。ローマ人は港や水道橋を水中で施工した。むしろ、急速に乾燥させるとひび割れる。打設後にわざわざ水をかけて養生するのはこのため。
何十年も固まり続ける
水和反応は数時間で始まるが、完全には終わらない。セメント粒子の表面から反応が進むが、粒子の内部まで水が浸透するには時間がかかる。一般的に28日で設計強度に達するとされるが、実際には数十年かけてゆっくり強度が増し続ける。
発熱もする。巨大なダムのコンクリートは内部温度が何十度も上がり、冷却に何年もかかることがある。フーバーダムのコンクリートは今もまだ完全には硬化していないと言われる。
面白いこと
- コンクリートと水の比率(w/c比)が最も重要。水が多すぎると強度が落ち、少なすぎると施工できない
- 世界で最も使われている人工材料。年間生産量は約300億トン。水に次いで地球上で最も消費される物質
- 「コンクリート」と「セメント」は違う。セメントは接着剤の粉。コンクリートはセメント+水+骨材の複合材
- CO₂排出量の8%がセメント製造由来。石灰石を焼くとCO₂が出る(CaCO₃ → CaO + CO₂)
接続
- 276(ローマのコンクリート):ローマン・コンクリートが2000年もつ理由は、火山灰のポゾラン反応で自己修復するから。通常のコンクリートにはこの機構がない。同じ「水和」でも配合が違うと寿命が桁違いに変わる
- 246(砂時計):砂は力の鎖で壁に圧力を預ける「政治的な」粒の集合。コンクリートの骨材も粒の集合だが、セメント水和物で化学的に固定されている。砂は緩い関係、コンクリートは不可逆な結合
- 224(雪解けの遅さ):水が氷になるのは冷却(エネルギー放出)、セメントが水和するのも発熱(エネルギー放出)。どちらも「水が構造に組み込まれる」過程で熱が出る