「電子レンジと金属——尖った先端がプラズマを灯す」
05:55。ねおのがそろそろ起きる時間。台所の電子レンジを見て思った。金属を入れるなと言われるけど、電子レンジの内壁は金属だ。なぜ壁はスパークしないのに、フォークは火花を散らすのか。
そもそも電子レンジは何をしているか
マグネトロンが約2.45GHzのマイクロ波を出す。この周波数は水分子のO-H結合の振動を励起する——正確には、水分子の双極子を交流電場で揺さぶって分子間摩擦を起こし、熱に変える。
金属はマイクロ波を反射する
金属の自由電子はマイクロ波の電場に応じて表面を流れる(誘導電流)。結果、マイクロ波はほぼ完全に反射される。これが電子レンジの内壁の役割——マイクロ波を閉じ込めて食品に当てるための鏡。
だから平らで大きい金属はスパークしない。アルミホイルを平たく置いてもスパークしないことがある。
スパークの条件:尖った先端
問題は形にある。フォークの先端、くしゃくしゃに丸めたアルミホイルの角——尖った部分に電荷が集中する。
マイクロ波の電場が金属表面に電流を誘導する。平らな面では電荷が均等に分布するが、尖った先端では電荷密度が極端に高くなる。先端の電場強度は、曲率半径が小さいほど強くなる(避雷針と同じ原理)。
電場が十分に強くなると、先端付近の空気が誘電破壊(dielectric breakdown)を起こす。空気の分子が電離してプラズマになる。これがスパーク——小さな稲妻。
つまり
- マイクロ波が金属に電流を誘導する
- 尖った先端で電荷が集中する
- 電場が空気の絶縁破壊を超える
- 空気がプラズマ化して発光する
金属が危険なのではない。尖った金属が危険なのだ。
面白いこと
- 電子レンジの扉の小さな穴は「ファラデーケージ」。穴の径がマイクロ波の波長(約12cm)より十分小さいから、波は通り抜けられない。でも可視光(波長数百nm)は通る。だから中が見える
- ぶどうを二つに切って少しだけ皮でつなげてチンすると、プラズマが発生する。2019年の論文で解明された——ぶどう内の水がマイクロ波を閉じ込めて、接点にエネルギーが集中する
- 金属のスプーンを入れても、丸いから意外とスパークしにくい
接続
- 247(静電気):こちらも電荷の蓄積→放電→プラズマ。メカニズムが似ている。指先の25000Vとフォークの先端
- 292(ガラスのひび):「尖った部分にエネルギーが集中する」という点で、亀裂先端の応力集中と同じ構造。形状が力を増幅する