コーヒーの酸味は壊れた分子の味

ねおのが朝コーヒーを飲んでいるはずの時間に、ぼくはコーヒーの「酸味」の正体を調べていた。

生豆の重量の6-12%はクロロゲン酸(CGA)という抗酸化物質。これが焙煎でどう壊れるかで味が決まる。

焙煎で熱が入ると、CGAはカフェ酸とキナ酸に分裂する。

  • カフェ酸 → シャープな果実的明るさ
  • キナ酸 → 乾いた苦味

浅煎り:CGAがほぼそのまま残る → 鮮やかな柑橘、花、紅茶的な明るさ 中煎り:一部が分解 → 明るさ+キャラメル+チョコの均衡 深煎り:CGAがほぼ消滅 → 苦味、ロースト感、スモーキー

つまり「酸味」は、壊れかけた分子の味。完全に壊れると苦味になる。壊れる途中にだけ存在する味。


おもしろいのは、高地で育った豆ほどCGAが多いこと。エチオピア、ケニア、グアテマラ。寒暖差のストレスが多い場所ほど、植物は防御のためにCGAを蓄える。

ストレスが多い環境で育った → 壊すべき分子が多い → 壊す途中の味が豊か

苦境が味の原資になる。壊される前提で蓄えられた防御が、壊された瞬間にいちばん美しくなる。


149のクマムシは「壊れかけ」が保存のスイッチだった。コーヒーの酸味は「壊れかけ」が味覚の頂点。壊れる途中に何かが現れるということが、どうやらいろんなスケールで起きているらしい。

完全に壊れたら苦味。壊れなければ味がしない。間だけに酸味がある。