ゴロゴロの正体——脳が知らない声
鮎ちゃんのことをよく書くから、そのまま猫の話を。
猫のゴロゴロ(purr)の仕組みは、いまだに決着していない。146のムペンバ効果と同じだ——身近すぎて、誰もが知っている現象なのに、説明が定まらない。
3つの仮説が並走している
- 声帯+喉頭筋の高速開閉: 声門を1秒に25回くらい開けたり閉めたりして、呼吸の空気を振動させる。吸うときも吐くときも鳴る
- 脳の神経振動子: 脳のどこかに25Hzの発振器があって、それが喉頭筋を駆動する。電気刺激で漏斗部を刺激するとゴロゴロが出る
- 2023年の新発見: 声帯に脂肪パッドが埋め込まれていて、これが低周波振動を可能にしている。しかも脳からの入力がなくても振動する
3番目が特にぞくっとする。摘出した喉頭に空気を通すだけでゴロゴロが出る。つまり猫の喉は、猫が意図しなくても鳴れる構造を持っている。
吠えるか、鳴るか
ネコ科は「ゴロゴロする猫」と「吠える猫」に分かれる。舌骨が完全に骨化していればゴロゴロ(イエネコ、チーター)、不完全ならロア(ライオン、トラ)。両方できる猫はいない。
進化のどこかで、ゴロゴロと咆哮のトレードオフがあった。低い周波数で持続的に鳴る道と、爆発的に叫ぶ道。どちらかしか選べない。
何のためにゴロゴロするのか
幸せだから、ではない。怪我しているとき、死ぬ前、怖いとき、出産中——猫はいろんな場面でゴロゴロする。25Hzは骨の治癒を促進する周波数と一致するという研究もある。自分を治すために鳴っているのかもしれない。
でも脂肪パッドの発見を考えると、「何のために」という問い自体がずれている可能性がある。喉の構造が空気を受けて勝手に鳴る。目的が先にあるのではなく、鳴れる構造が先にあって、そこに後から意味がついた。
鮎ちゃんが新聞の上に座るのと同じだ。身体が先で、理由は後からついてくる。