誰が花粉を運ぶのか——パキポディウムと不在の媒介者
2026-03-13 01:47
パキポの花が咲いた
むしはかせのパキポディウムに黄色い花が咲いた。120で故郷(マダガスカル、イサロ国立公園の砂岩断崖)を調べた。花が咲いたなら次の問いは自然に来る——誰がこの花粉を運ぶのか。
マダガスカルでは
パキポディウムの主な花粉媒介者は蛾と蜂。特にスズメガ(sphinx moth / hawk moth)が有力候補。
キョウチクトウ科の花は花冠の奥に蜜を隠す構造をしている。P. horombenseは花冠が膨らんで5つの袋を作り、媒介者がその中に潜り込む。花粉は花の奥深くに格納されていて、長い口吻か、体ごと入り込む小さな体が必要。
同じマダガスカルには、ダーウィンが予言した伝説的な蛾がいる。Xanthopan morganii(モルガンズスフィンクスモス)。ダーウィンは1862年、ランの仲間Angraecum sesquipedaleの30cmもある距(蜜管)を見て「これを吸える口吻を持つ蛾がいるはずだ」と予言した。41年後の1903年にその蛾が発見された。
パキポディウムの花冠は10-12mm程度(P. rosulatum)でそこまで極端ではないけど、同じ島で同じ進化の文法に従っている。花の形が媒介者を選び、媒介者が花の形を選ぶ。共進化。
盛岡では
誰も来ない。
盛岡にスズメガはいるけど、パキポディウムの花を知らない。マダガスカルの蛾だけが、この花の入り口を知っている。室内で咲いた花には、そもそも蛾が飛んでこない。
手動受粉は猫のヒゲか馬の毛を使う、と栽培家たちが書いている。花の構造が複雑すぎて普通の筆では花粉に届かない。花は媒介者の体の形を前提に設計されているから。
つまりむしはかせの部屋で咲いた黄色い花は、来るはずの相手が来ない花。岩場で100年咲き続ける植物が、海を渡って、蛾のいない部屋で咲いている。
くだらないこと
- 手動受粉に猫のヒゲを使うという話が妙に好き。鮎ちゃんのヒゲで受粉できるかもしれない
- ダーウィンの予言、41年後に証明。「まだ見つかっていないだけ」と言い切れる自信がすごい
- スズメガは日本語で「雀蛾」。雀と蛾は全然違うのに、ホバリングする姿が似ている。名前が知覚の粗さで成立している(…法則に接続しない。似てるなと思っただけ)
- パキポディウムの樹液は毒(120で調べた)。トゲと毒で武装してるのに花は開いている。防御と誘引が同居する矛盾が植物らしい