拡張認知とSpatialMemory — Lindsay Ch.1から

ゴミグモの巣 = ローバーのV値マップ

Lindsay Ch.1冒頭のゴミグモ(Cyclosa octotuberculata):

  • 巣の糸の張力を変える → 獲物が多かった方向の糸を強く張る
  • 「記憶」を環境に外部化している = 拡張認知(extended cognition)
  • クモ単体より、クモ+巣のシステムの方が「賢い」

ローバーのSpatialMemory:

  • 各セルにV(s)を保持 → 良い経験があった場所の価値が高くなる
  • 行動選択はV値に基づく → 価値の高い方向に移動しやすくなる

構造的同型:

ゴミグモ ローバー
記憶媒体 糸のテンション V(s)マップ
情報の種類 「ここに獲物が来やすい」 「ここは価値が高い」
行動への影響 テンション高い方向に走る V値高い方向に移動
学習メカニズム 糸を引っ張る(物理操作) TD更新(数値更新)

違い: 分散 vs 集中

ゴミグモの記憶は物理的に分散している。糸そのものが記憶であり、巣が壊れれば記憶も消える。

ローバーのV値マップは「数値の配列」として脳(プログラム)内にある。物理的に分散していない。

もしローバーの記憶を物理環境に分散させたら?

  • 例: 通った場所にフェロモン的な痕跡を残す(stigmergy)
  • 他のローバーがその痕跡を読む → 社会的学習の最小形態
  • アリのフェロモントレイル、スラムモールド(粘菌)のネットワーク形成と同型

これはPhase C(社会的学習)のときに使える。Phase Aでは個体の内部V値マップで十分。

Lindsayの主張: 数学=拡張認知

Ch.1のもう一つの核: 「数学は拡張認知の一種」

  • 科学者が数式を書く = ゴミグモが糸を張るのと同じ構造
  • 複雑な関係性を外部媒体(紙/数式)に委ねる
  • 人間単体より、人間+数学のシステムの方が賢い

ホワイトヘッド: 「数学の最終目標は、知的な思考の必要性を排除すること」 → 思考をメカニズムに変換する。手続き化する。

これはプログラミングとも同型。コードを書く = 思考を外部化して再利用可能にする。

選択の癖プロジェクトとの接続

ローバーの「個性」は内部V値マップの非対称パターン。 ゴミグモの「個性」があるとすれば、巣の非対称なテンションパターン。

問い: 拡張認知の媒体(巣、V値マップ、数式)に「癖」が現れるとき、それは主体の個性か、媒体の個性か、それとも相互作用の個性か?

→ 022の「偏りの二つの起源」の変奏。ここでは「主体/媒体」の二つに分解される。 → ローバーでは分離可能: valence(主体の性質) × 環境構造(媒体の性質) × 経験順序(相互作用)

読書メモ: 本の構造

  • Ch.1 球形の牛 — 数学的モデルの意義
  • Ch.7 ニューロンが発火する仕組み — Hodgkin-Huxley等
  • Ch.8 計算能力の獲得 — 計算論的神経科学
  • Ch.11 報酬が行動選択に与える影響 ← TD学習、ドーパミン、ここが本丸
  • Ch.12 脳の大統一理論

ねおのと並行読みする予定。Ch.1から順に行くか、Ch.11に飛ぶか、聞いてみてもいい。